鴻池朋子より 作品設置完了のご報告:2024年8月2日
ついにプープランドへ作品を設置してきました。この「メディシン・インフラ プロジェクト」に協力してくださっているギャラリーMoMoの杉田さんの大きな車で、茨城県桜川市にある伊沢さんの”ウンコの森”まで作品を輸送し、伊沢さんと杉田さんと私の3人で、大きな大きな角のついた子どもの足の作品を担いで森へ入りました。(作品サイズ 左脚2,640×1,250×520、右脚2,640×1,760×1,750mm)
一年ぶりに再訪した森を、伊沢さんの後をついて一周し、私がまず作品の設置に選んだ場所は、伊沢さんがゆくゆくはそこでご自身の体を埋めて土に還したいと考えている、つまりお墓となる場所でした。ここはすぐに決まりました。場所がとっても素直な感じがしたからです。
柔らかい木漏れ日が差し、サーっと気持ち良い風が森の下から吹き上げてくるなんともいい場所で、未来のお墓のランドマークとして、ポンとそこに右足の作品を置きました。3人で納得。
そして左足の作品は、この森のはずれの境界線近くに置きました。プープランドの広葉樹が終わり、植林した針葉樹がすぐそばに見えてくる場所です。ここを抜けると、昔からの古く小さなお墓があり、さらにその先には70年代の高度経済成長期から山を掘削し続けている巨大な採石場が見えてきます。私たちの都市の建築材料となるために何個も山が食べ尽くされていくような景色を見る一方で、伊沢さんの広葉樹の森は小さな生命たちが、着実に私たちのウンコによって活き活きと生まれ続けている。ここも瀬戸際のような場所です。プープランド生態系という概念とも違う、もっと現実的で、今を生き延びていくために、生き物が自分の糞を使って生み出した至難の方法、新しい循環を見るような凄さを感じました。
ところで、今回の私の作品の素材はFRPという強化プラスティックです。これもやはり高度経済成長期から盛んに使われ始めた人工的な材料です。中の骨組みにしている鉄骨やボルトも見えます。
作品をつくる、ものをつくる、ということは、人が自然に手を加えることで、そもそも作品とはとても不自然なもの。ウンコは森の栄養となりますが、作品はゴミにこそなっても一つも栄養になりません。それでも、人はものをつくる。
いろんなことを3人で森で語り合いながら、清々しく設置を終えました。
この森はなんてタフで逞しいんだろう。こんな勇気が湧いてくる設置ってなかなかないです。
陸にあがる(右脚)
鴻池 朋子
ミクストメディア、FRP
264×176×175cm
Go Ashore (Right leg)
Tomoko Konoike
Mixed media, FRP
264×176×175cm
陸にあがる(左脚)
鴻池 朋子
ミクストメディア、FRP
264×125×52cm
Go Ashore (Left leg)
Tomoko Konoike
Mixed media, FRP
264×125×52cm