
KIM Insook
Between Breads and Noodles
Mar. 25 - Apr. 26, 2023
Ryogoku
金 仁淑
Between Breads and Noodles
2023年2月25日 - 3月26日
両国
GALLERY MoMo 両国では2月25日(土)から3月26日(土)まで金仁淑の個展『Between Breads and Noodles』を開催します。
ビジュアルアーツ専門学校写真学科を卒業後、2003年に韓国の漢城大学芸術大学院西洋画科写真映像コースに留学し、2005年同大学院修了。15年間のソウル暮らしを経て、現在、ソウルと東京を拠点に制作活動を展開しています。
国立現代美術館(韓国)、2008年光州市立美術館で個展「sweet hours」を開催した他、ドイツ、韓国でのレジデンシープログラムに参加しました。大邱フォトビエンナーレ、森美術館、京畿道美術館、東京都写真美術館、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAなどのグループ展に参加しています。
金は、「多様であることは普遍である」という考えを根幹に置きながら制作を続けてきました。自身のルーツである在日コリアンの「学校」や「家族」というコミュニティにいる人々を追った《sweet hours》、《SAIESO: between Two Koreas and Japan》をはじめ、自身の結婚式のパフォーマンス写真と映像で構成される《The Real Wedding Ceremony》では、フィクションの要素を盛り込むことで伝統や儀式とは何なのか、示唆的に疑問を投げかけ、家族の拡張を模索した作品を制作しました。こうした複数の文化、国籍の狭間に生きる人々を追いながら、多様な「個」の日常や記憶、歴史、伝統、共同体、民族、家族などをテーマにしながら、それぞれの「平穏な日常」を描き、その多様性を表現してきました。
2021年には、当ギャラリーで《Ari, A letter from Seongbuk-dong》を発表し、移りゆく韓国ソウル市城北洞のまちの景色と世代を超え語り合われる「伝統」の保存と更新について示唆し、他者と結ぶ「家族関係」=「家族の(範疇の)拡張」をテーマとしたプロジェクト《House to Home》(東京アーツアンドスペース) TOKAS 本郷OPEN SITE 6での展示『House to Home』と同時開催することで、金が長年追求してきたものを目まぐるしく変化してきた東京のまちを繋ぐように展示し、高い評価を受けました。
また、障害を持つ人や移民、性的マイノリティなど異なる背景を持つ人とアートを通じてどのようにコミュニケーションするかについて、日韓の美術館学芸員・ギャラリー・アーティストを招待し、オンライントークイベント金仁淑《アートの制作と鑑賞における翻訳可能性》(主催:記録や資料を⽤いた作品制作のためのリサーチ[東京大学:文化芸術におけるSDGsのためのファシリテーター育成事業)]を開催しました。
本展では、2014年デュッセルドルフ市(ドイツ)が運営するアーティスト・イン・レジデンシーで滞在しながら制作した在独韓国人とドイツ移民に焦点を当てた《Between Breads and Noodles》のシリーズを展示いたします。
金は、自身が日本への移民3世であることから、政府事業としてドイツへ派遣された在独韓国人や彼らの家族を写真におさめ、移民2世以降のアイデンティティに着目し、国籍の狭間に生きる人々に追った写真とビデオ作品を制作すると共に、アジアのインスタントラーメンでタワーを作り、展示会場を訪れた人々に食べてもらうというパフォーマンスも行いました。「移民」という言葉では一括りにはできない多様な背景と価値観を持ったデュッセルドルフの移民たちを捉えた写真と映像作品をご高覧いただけたら幸いです。
また、東京都写真美術館で開催されている『恵比寿映像祭2023』にコミッション・プロジェクトとして新作《Eye to Eye》を展示しております。合わせてご高覧ください。
アーティストコメント
日本・韓国・北朝鮮のはざまに暮らす人々の個性や多様性に着目したプロジェクトをはじめ、韓国や中国、ドイツで、地域やコミュニティの人々とのコミュニケーションを基盤としたプロジェクトを行い、イデオロギーや自分と異なる背景を持つへの「偏見」を超え、より良い関係性を模索するプロジェクトを2001年から継続的に行ってきました。
本企画の個展及び宇多村英恵さんを招いて行うトークイベント『Between Breads and Noodles』は、在日外国人や海外に移住した日本人の視点を交えることにより、「異なる文化背景を持つ人々」を他人事として見過ごすのではなく、自分の隣で共生する存在として見つめることについて共に考察することを目的としています。Gallery MoMoのご協力とアーツカウンシル東京の令和4年度第一期東京芸術文化創造発信助成を受けて開催実現に至りました。
作品は1963-1977年に大韓民国の国家政策により、炭鉱夫と看護婦としてドイツへ派遣され、移住後、現在までドイツで暮らす人々とのコミュニケーションを基盤として制作しました。異国へ渡った移民2世以降のアイデンティティを見つめる過程を写真・映像作品で収めると共に、ヨーロッパで生きるアジア人としての彼らのアイデンティティを韓国、日本、台湾、インドネシア、ベトナム、タイから輸入された約40種類のインスタントラーメン約2,000個を積み上げたラーメンタワーで表現しました。そしてそのラーメンタワー(=ヨーロッパに住むアジア人)に近づき、味を選び(=個性を知り)、食べてみる(=親しくなる)までの行為により、人が他者の個性にたどりつくことを食べ物に比喩したパフォーマンスを行いました。ヨーロッパの中でアジア人として生きる彼らに着目し、人種による偏見を個性や多様性へと転換することを試みたこれらの作品を通じて、彼らの立場を共に体験するインスタレーションとなっています。
また、会期中にアーティスト宇多村英恵さんを招いて行うトークイベント『Between Breads and Noodles、アーティストが見つめるはざま』では、アメリカに住む宇多村さんと2022年2月から1年の期間を経てオンラインで対談を行い、トークイベントで発表する内容についてのリサーチ、研究を進めてきました。
大阪、韓国ソウル、東京と移住しながら在日外国人アーティストとして暮らす自身の体験と、茨城で生まれ、イギリスに留学後、ドイツへの移住経験を経て、現在はアメリカでアーティスト活動を行う宇多村英恵さんの体験を交え、日本を内と外から見つめ、異なる背景を持つ人々とどのような関係性を持つかについて、共に考える機会を設けたいと思います。
最後に、2月3日~3日26日まで本展覧会と同時に開催されている恵比寿映像2023「コミッション・プロジェクト」に10チャンネルヴィデオ・インスタレーション『Eye to Eye』を発表しています。2022年に制作した最新作で、意識しないと見過ごしてしまう「自分と異なる背景を持つ人々」の個性と向き合うことについて考察するための作品です。滋賀県愛知郡愛荘町にあるサンタナ学園(コレジオ・サンタナ)と出逢い、共に過ごしながら、0歳から18歳の約80名の子どもたち、そしてサンタナ学園を支える先生や支援者と1人1人向き合うプロジェクトを通して制作しました。
『Between Breads and Noodles』と『Eye to Eye』を通じて、就労のために異国へ渡った国内外の移民の立場を交差させ、「異なる文化背景を持つ人々」を自分の隣で共生していく存在として見つめる機会となることを願っています。 合わせてご高覧いただけると幸いです。
展覧会へのたくさんの関心と、トークイベントへの参加をお待ちしております。











