GALLERY MoMo Ryogokuでは4月8日(土)から5月13日(土)まで小橋陽介の個展「グッド フォーメーション -NEW NORMAL PAINTINGS-」を開催いたします。
小橋陽介は1980年奈良県生まれ。2003年大阪芸術大学卒業後、2004年神戸アートアニュアルに出品、2006年水戸芸術館クリテリオムでの個展と同時にVOCA展へも推薦され、自由で伸びやかな画面構成と豊かな色彩感で注目されるところとなりました。2014年には、国立国際美術館でのグループ展「ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉」に参加。また、2019年に当ギャラリーで開催された川島との2人展『飛びます』は、熱海のビルから始まり、ユトレヒト(東京)やカフェ・ル・プリュー(大阪)などで開催されました。近年は、川島小鳥が2021年に立ち上げたブックレーベル、piyo piyo pressから刊行された画集『花とイルカとユニコーン』とともに全国各地で展覧会を開催。昨年末は取り壊し予定のビルの一室をアトリエとし、退去時には川島小鳥とともに開催した二人展「Pink Noise Dance」は、空間を生かしたインスタレーションを展開し好評を博しました。さまざまな空間での展示を精力的に開催し、高い評価を受けています。
初期から続くself-portraitシリーズは、小橋の代表的な作品であり、ゴーギャンのような荒々しい色彩やタッチ、またマティスが『ダンス』で描いたような柔らかな体のラインに躍動感を感じさせ、自然と一体に描かれた裸体の自画像は見る者に開放感をもたらしてきました。近年、モチーフは身近な人々やありふれた植物へ広がりを見せながら、意図的に思想性を排除し、ただひたすら楽観的なだけにも見えますが、そこには境界線がなく、カテゴライズされることのない寛容性のある表現により、多様性に溢れた社会と時代を象徴する要素を含み、展示方法にも作品に観られた自由で伸びやかな感覚を見ることができます。
本展覧会では、映画「ファーストスラムダンク」から「フォーメーション」という言葉にインスピレーションを得て、その言葉を作品制作における「配置」という構図に関する言葉に転換させたタイトルを「グッド フォーメーション」としました。また、小橋が制作の際に何度も立ち帰るという「普通に描く」という考えをベースに、1980年代に起こった新表現主義(ニューペインティング)にならい、「ニューノーマルペインティングス」というサブタイトルをつけています。
絵画の描き方は、技術の革新により日々進化し、アーティストはパソコンに向かってドローイング(下図)を作り込んでからキャンバスへ移行することが容易になり、どのように作られたのかわからないような作品や、筆致がわからないほど巧みに作り込まれた作品も多く見られます。しかしそれは、アーティストが描きたいと考えるテーマや意図がより簡単に実現できるようになる一方で、下図という手段に囚われ、自由さを失いつつもあるのかもしれません。小橋の「普通に描く」という言葉と作品は、そういったことに気づかせてくれるでしょう。
絵画では使い尽くされ、脇役のような動植物などのモチーフや、絵画の中で小道具のように描かれてきた食べ物をあえてモチーフに選びながら、小橋の作品とわかる柔らかなラインと色彩や自由さは、「現代アートとはこうでなければいけない」とか「社会的なテーマを取り入れなくてはならない」という凝り固まった考えを忘れさせ、絵画の喜びを思い出せてくれます。